眠っている間に、呼吸が止まったり弱くなったりすることを繰り返す病気です。このうち、上気道(鼻からのど)が狭くなったりほぼ閉塞したりしてしまうことによるものを閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)と言います。一方、脳の病気や心不全などによって脳の呼吸中枢に異常が起き、呼吸が止まったり弱くなったりしてしまう状態を中枢性睡眠時無呼吸症候群(CSAS)と言います。ほとんどの方で起きているのは、前者の「閉塞性睡眠時無呼吸症候群(OSAS)」です。
閉塞性睡眠時無呼吸症候群において、いびきは上気道が狭いサインであり、呼吸停止・減弱が繰り返されることで血中の酸素濃度が下がり、脳や心臓に負担がかかります。原因としては、肥満、下顎の小ささや舌の大きさ、鼻づまり、扁桃肥大、仰向け寝の習慣、アルコールや睡眠薬の影響などが関与します。
自覚症状としては、不眠、夜間頻尿、睡眠の窒息感、日中の過度の眠気、起床時の頭痛、起床時の疲労感などが挙げられます。
睡眠中のいびきや呼吸停止、あえぎ呼吸をご家族に指摘されたり、仕事中の居眠りや居眠りによる運転事故で発覚したりすることもあります。
高血圧や脳血管障害、心疾患、気分障害といった疾患が、睡眠時無呼吸症候群によって引き起こされている可能性もあります。
欧米では30歳から60歳の男性の9.1%、女性の4.0%に睡眠時無呼吸があったと報告されており、日本人でも同様の結果が報告されています。
男性、中高年、肥満の方に多い傾向がありますが、やせている方や女性でも起こることがあり、気づかないまま日中の眠気や集中力低下、頭痛などの原因になっていることがあります。特にアジア人は頭蓋骨の形から欧米人よりも気道が狭くなりやすいと言われており、アジア人の女性は欧米人の男性と同等の有病率とも言われています。
未治療のOSAは、高血圧、心不整脈(心房細動など)、心不全、脳卒中、冠動脈疾患などのリスクを高めることが知られています。また、2型糖尿病やメタボリックシンドロームの悪化にも関与します。さらに、日中の強い眠気による集中力低下から、居眠り運転などの交通事故を引き起こす危険性もあります。適切な治療により、これらのリスクを減らし、生活の質(QOL)の改善が期待できます。
睡眠時無呼吸症候群を疑ったら、まずこちらの問診票に答えてみてください。
睡眠時無呼吸症候群が疑われる場合、当院ではご自宅で行う検査が可能です。
また、診察で上気道に腫瘍などの病変がないかも確認いたします。
いびき、呼吸の強さ、酸素飽和度、体位などを測定します。装着が簡単で、OSASが疑われる方のスクリーニングに適しています。当院でのお申込み後、検査会社から検査機器が発送されますので、ご自宅で2日間かけて検査を行ってください。検査後、検査機器を送り返していただき検査会社で結果を解析します。お申し込みから約1ヶ月後に当院で結果のご説明が可能となります。この結果は、1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(無呼吸低呼吸指数:AHIまたはREI)として示されます。※当院で使用している検査機器では、RDI(呼吸障害指数)として算出しています。
診断基準としては、
| AHI(REI)値 | 判定 |
|---|---|
| < 5 | 異常なし |
| 5 ~ < 15 | 軽症 |
| 15 ~ < 30 | 中等症 |
| 30 ≦ | 重症 |
となります。 簡易検査でのAHI(REI)が40以上の場合、持続陽圧呼吸療法(CPAP)の適応となります。 AHI(REI)が40以上とならなくても、重症が疑われる場合はより詳細な脳波検査等を加えた終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)を行います。
脳波、眼球運動、筋電図、呼吸、酸素、心電図などを同時に測定する精密検査です。
基本的に病院に宿泊して行う検査ですが、当院では、重症OSASが疑われる方についてご自宅で行うPSGが可能です。結果はAHIとして示されます。このAHIが20以上の場合、CPAPの適応となります。
外来で診察・検査依頼書を作成します。
検査会社から機器がご自宅に郵送されます。
ご自宅で2日間測定します(装着方法は説明書・サポート窓口があります)。
測定後、同梱の資材で機器を送り返していただきます。
検査会社がデータを解析します。結果が当院に届くまでおよそ2週間かかります。
検査申し込みから約1ヶ月後、再診にて検査結果と治療方針について説明いたします。
肥満のある方は減量が有効です。一般的に20%の減量でAHIが50%程度まで減ると言われています。特に顎の小さい日本人では10%程度の減量でも十分効果がある可能性があります。減量の基本は摂取カロリーと消費カロリーのバランスを整えることです。肥満症に対する専門的な治療を行う病院もあり、ご紹介も可能です。
仰向けで寝ると低呼吸、無呼吸になりやすいので、横向きやうつ伏せで寝られるような工夫をしていきます。古典的には背中にテニスボールや細長い枕を入れたり、うつ伏せで寝るための寝具を使用したりします。
鼻呼吸が正常にできていないと、口呼吸となり気道が狭くなる原因となります。また、後述のCPAPは鼻にマスクを装着して行いますので、高度の鼻づまりがあると苦しくて継続することができません。診察で鼻中隔弯曲症や肥厚性鼻炎を認める場合は、全身麻酔での内視鏡手術や局所麻酔でのレーザー治療をお勧めすることがあります。
軽症〜中等症の方に適応があります。下顎を前に出した位置で固定することで、上気道を広げ、いびきや無呼吸を軽減します。仰向けで無呼吸が悪化する方、CPAPが合わない方などでも効果が期待できます。当院で適応を判断し、専門の歯科にご紹介して作製・調整を行います。
就寝時に鼻マスクなどから空気を送り、のどを内側から支えて塞がらないようにする治療です。当院ではCPAPの導入、管理が可能です。いびきや無呼吸を改善し、日中の眠気や高血圧なども軽減します。継続使用が重要で、マスクのフィット感や気流の圧、加湿設定などを調整しながら快適に使えるようサポートします。近年では出張の多い方向けに小さい機械も実用化されています。1ヶ月に1回通院していただき、呼吸のサポートがうまくできているかチェックいたします。状態が安定している患者様はオンライン診療での対応も可能です。
CPAPや口腔内装置で改善が得られない場合に考慮されます。非常に専門性の高い治療になりますので、大学病院の睡眠外来などにご紹介いたします。